無題。 [独り言]
頭がイタイ。頭がイタイ。アタマガ、イタイ。
右のこめかみ辺り。
鈍い痛みが、僕の躯を侵していく。
段々と、僕の頭の中は腐っていく。
もうきっと、額の辺りまで、腐り始めてる。
わかるんだ。
これは単なる前兆で、もうすぐ僕の頭は、腐りきってしまうんだろう。
きっと馬鹿げた論争なんてしたからだ。
自然を守るために、人間が絶滅すればいい、なんて。
馬鹿げてる、そんなこと。
人間がいなくなって、地球だけが残って。
それになんの意味がある?
確かに原始の頃は、今みたいな狸や狐の化かし合いもなかっただろうし。
それはそれで理想の世界なのかもしれないけれど。
そこから僕らの歴史は始まって、今に至って。
たとえば。
この先、人間が絶滅したとして。
それでもまた新たな人類が生まれるんだろう。
進化という名の下に。
それが、今の繰り返しにならないと誰が断言できる?
君が言うように、繰り返しにならない、別の進化があるとして。
これまで人が創り上げてきたものは、すべて無用の産物だった、と。
そう言いきってしまうのか、君は。
僕らが生まれてきた意味さえも、否定してしまうのか。
人間なんて、生まれなきゃよかったのに、と。
今生きている僕らが死ぬことが、地球に一番いいのだ、と。
そんなの、矛盾してる。
僕らが生きるために、自然を守ろうとしているんじゃないのか。
僕らの子孫が、この世界で生きていけるように。
今の僕らが自然を守ろうとしてるんじゃないのか。
僕らが生きていることが、地球にとって罪になるならば。
なぜ僕らは生まれてきた?
原始の頃のように、少数民族で生きていけばいいと。
そう理論づける君に、懸命に異を唱える僕がいる。
だって、それじゃぁ僕らが今ここにいる理由がないじゃない。
動物から人間と形を変え、知性を持ち、今の僕らがいる。
だからこそ自然が破壊されているのは事実だけれど。
だからって、人間がいなくなって、原始に戻ればいい、なんて。
そんな極論には賛成できないよ。
犯罪者は悪だから、排除すればいいなんて。
そんな簡単に言えないよ。
だって人間だもの。
道を外すことだってあって当たり前じゃない。
一度犯罪を犯したら・・・たとえば、それが殺人だったとしても。
それだけで排除するなんて、できやしないよ。
人間だもの。
感情がある生き物なんだもの。
君が言ってる理論は、ある意味では正しいのかもしれない。
ある意味では、本当の理想の姿なのかも知れない。
でも、今こうして僕たちは現にこの世界に生きている。
だからこそ、僕はその理論には異を唱えざるをえない。
だって、それを肯定してしまったら。
僕がココにいる意味も、そもそも生まれおちた意味もなくなるじゃん。
今まで積み上げてきたものも、無意味なものになって。
死んだ方がいいよね、なんて話になっちゃうじゃん。
死のうか、なんて言葉が、甘い囁きに聞こえちゃうじゃん。
でもね。
理路整然と君の意見に異を唱えながら、心の何処かで思っちゃってる。
それが一番理想的な世界の在り方なのかもしれない、なんて。
そんな自分が、ひどく滑稽に見えるんだ。
だって、僕は生きていきたいから。
それにこそ意味があると思いたいから。
それでも、君の言葉は僕を甘美な世界へ誘い込むんだ。
なんでもいいから、理由がほしい。
人間が、僕らが、この世界で生きている理由が。
それがうまく見つけられなくて、僕はまた闇に堕ちていく。
正直な話、この世界がどうなろうと、知ったこっちゃないんだ。
ただ、僕は僕らが生まれてきた意味が知りたい。
どんな理屈でもいいから、僕らが生まれたことに価値があると言ってほしい。
信じることより疑うことの方が簡単で。
もがいて生きていくより死んでしまうことの方が簡単で。
それでも、信じて、もがいて生きていくことに意味があるんだ、と。
どうか、僕を生かせてください・・・。
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